そして177ページでは「上で見た従量税と同じだけの税金を消費者に課すことでも、取引量はやはり社会的に最適な水準となりますので、ことのことを図を描いて確認してみてください」と言いました。この課題を、一緒に考えていきましょう。
生産者側に課税するケースの復習
まず生産者側に課税するケースを復習します。 消費者の需要曲線と生産者の供給曲線は次のようなものだったとします。
このとき二つの曲線の交点を見ると、均衡における取引量がわかります。
そして注目している財・サービスを1単位生産するごとにxだけの負の外部性が発生するとき、私的な限界費用を反映している供給曲線よりもxの分だけ上に、社会的限界費用曲線が描かれることになります。
ここで何が問題なのかというと、下の図にあるように、社会的に最適な水準よりも取引量(=生産量)が過大になってしまっているわけです。
この負の外部性に相当する費用も、仮に生産者が負担しなければならなかったとしたら、供給曲線はそれを考慮したものになるということは大丈夫でしょうか?
このときx軸から高さを考える限界費用曲線とy軸から数量を考える供給曲線とでは図の描き方が異なることには注意してください。
ここで次のように領域を区切って、
教科書175ページにある図8.3と同じように、AからHまで名前を付けます。
課税がない場合
課税がない場合には、上の図のyまで取引が行われるため、
となるため、合計すると、(A+B+C+D)+(E+F+G)-(C+D+F+G+H)となります。
結果として総余剰は、A+B+E-Hとなるわけです。
生産1単位あたりxの課税をする場合
それでは生産者側に、外部性の大きさxと同じだけの課税するケースを考えてみましょう。
このとき、生産者にとっての供給曲線は課税額xの分だけ上に移動することになります。
そして需要曲線と課税後の供給曲線の交点を見ると、課税により社会的に最適な水準まで取引量(=生産量)が抑制されたことが分かります。
それでは総余剰の大きさについて確認します。先ほど領域ごとに名前を付けたので、これをもう一度使うことにしましょう。
課税が行われている場合には、上の図のxまで取引が行われるため、
となるため、合計すると、A+(B+E)-(C+F)+(C+F)となります。
結果として総余剰は、A+B+Eとなるわけです。
先ほどの課税がないケースと比較して、Hの分だけ増加していることが分かりました。
消費者側に1単位あたりxの課税をする場合
それでは、本題に入ります。
生産者側ではなく、消費者側に課税しても、取引量が社会的に最適な水準となることを見ていきましょう。
ここでの政策目的は、負の外部性があることにより過大になっている取引量を、社会的に最適な水準まで抑制したいということです。
そして取引量を抑制するために、消費者側に課税をするわけです。
このとき生産者側の行動は、私的な限界費用によって決まる供給曲線により決まります。
ここで目指している水準まで取引量を抑制するためには、需要曲線がどこまで下に移動すれば良いのかを考えます。下の図のようなところまで移動すれば良いですね。
需要曲線が移動した幅は、外部性の大きさxと一致しています。
つまり必要な課税額は、1単位あたりxとなります。
それではこの場合の総余剰の大きさについて確認します。先ほどの図は今回は使えないため、あらためて領域にAからFまでの名前をつけておきます。
消費者側に課税が行われている場合には、上の図のxまで取引が行われるため、
となります。これを合計すると、(C+D)+(E+F)-(B+D+F)+(A+B)です。
ここでA+Bの面積とB+D+Fの面積が同じことに注意しましょう。平行四辺形の面積の求め方を思い出してください。
結果として総余剰は、C+D+E+Fとなるわけです。
生産者側に課税した場合には、この図の記号を使うと、A+C+Eだけの総余剰が実現していたわけですが、消費者側に課税した場合の総余剰の大きさも、これとまったく同じ大きさ(C+D+E+F)になっています。
これはAの面積とD+Fの面積が同じことから簡単に確認できます。A+Bの面積とB+D+Fの面積が同じことを先ほど見ましたが、両方からBを除くと、AとD+Fの面積は同じですね。